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2008年10月29日
◎米景気後退局面へ、ただドル売り繋がらず
発表される米経済指標がことごとく冴えない内容であることもあり、ここにきて急速に米国のリセッション(景気後退局面)入りが、声高に指摘されるようになってきた。
実際、最近発表された米経済指標を幾つか取り上げると、今月16日に発表された10月のフィラデルフィア連銀製造業指数は18年ぶりの低水準に落ち込んだほか、9月の鉱工業生産は34年ぶりの大幅下落をたどっている。また、その前日に発表された10月のNY州製造業業況指数が統計以来の最低レベルとなったことが確認されている。
確かに悪い数字の指標が少なくなく、米国のリセッション入りはある意味確かなのだろうが、個人的な感想を言わせてもらうと、「なにをいまさら」---という印象だ。
と言うのは、市場がもっとも注視している経済指標である米雇用統計において、非農業部門の雇用数が3ヶ月連続で前月マイナスとなった段階で、米国のリセッション入りはほぼ確実であったことによる。遅きに失した感は否めないと思う。
ところで、そんな米国は実を言うと「公式」にリセッションに入ったと認定されているわけではない。
これは米国の場合、全米経済研究所という機関が景気循環を認定しているのだが、同機関がまだ「リセッション入りした」と正式な発表を実施していないからだ。そうした意味では、これだけ物価高が続いているにもかかわらず、いまだに「デフレが続いている」とされる、我が国と状況が似ていると言えるだろう。
一方、景気後退観測が指摘される米国だが為替市場に目を転じると、それほどドル安が進んでいない。逆にドルは堅調に推移しているとさえ言えるかも知れない。
これは一体何故なのか。理由は幾つかあるけれども、最大の理由はリパトリエーションでないかと思われる。
これまで米国のファンドなど投資資金は、高金利通貨やエマージング通貨へと積極的に投資されてきたが、リスク回避の動きから、そうした資金が一気に自国へと逆流を起こす展開になっている。
それからすると、今回のような米国の危機は金融市場に目を転じると必ずしもドルの弱材料とばかりは言えない面を孕んでいる。むしろ、南アの通貨であるランドなど高金利の新興国通貨にとって最大のダメージとなる可能性もある。(了)
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