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2008年06月25日
◎リスボン条約批准否決、「アイルランドの乱」
EUの基本条約である「リスボン条約」の批准をめぐり実施されたアイルランドの国民投票は、賛成46・6%に対して反対53・4%となり、最終的に否決との結果がくだった。これにより、同国においては09年1月からの条約発効が絶望的となったほか、他国への「アイルランド・ショック」の余波も気にかかる。
一方で筆者には、今回の「アイルランド・ショック」の先鞭をつけたともいえる強烈な既視感を思い出す事象がある。それは92年に起こった「デンマーク・ショック」だ。
ちなみに、「デンマーク・ショック」とは92年6月2日の国民投票でEUの創設を決めた通称「マーストリヒト条約」がデンマークにて実施された国民投票で否決されたことを指す。単なる筆者のイメージとも言える既視感だけでなく、「デンマーク・ショック」は欧州統合に最初にミソをつけた重大事件としていまだに尾を引いている面がある。
実際、デンマークに続き実施されたフランスの国民投票は賛成51%対反対49%という大接戦の末、辛うじて条約が批准されたものの、その後の英国の投票ではデンマーク同様に批准が否決されるという結果が出た。これらを受けて、条約そのものが大きく改定され、そしてそれが「アムステルダム条約」「ニース条約」という変遷をたどり、現在の「リスボン条約」へと変化を遂げている。つまり、完成形とまでは言えないにしても、「リスボン条約」は過去の苦い歴史を踏まえたうえでのかなり精錬されたものであったわけだ。
ところが、先週12日に実施されたアイルランドの「リスボン条約」批准をめぐる国民投票は、否決という結果に終わった。つまるところ、16年前の「デンマーク・ショック」の再燃であり、関係者にとって大きなショックであることは疑いない。
一方、欧州は今月19日から2日間の日程でブリュッセルにて加盟27ヵ国の首脳会談を開催する予定となっている。当初は原油価格の高騰などが主要議題になると言われたが、今回の「アイルランド・ショック」を受けて欧州統合が緊急的な議題として挙げられことが確実視されている。
そこで如何なる議論がなされ、そしてどこに落とし所が設けられるのか、まだ判然としないところもあるけれど、ともかくその動向には注意を要するだろう。(了)
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