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2008年05月21日
◎日本版「本国送金法」、円高材料として要注意

一部インターバンク・ディーラーの間では、5月4日に読売新聞が1面トップで報じた「企業所得12兆円海外滞留、還流へ税免除検討」---が話題となっている。勘のイイ読者の方は、きっとデジャヴ、どこかで似た風景を見たと感じるのではなかろうか。

そう、これは05年に米国で導入され、為替市場でも「ドル高支援要因」として大きく材料視された、いわゆる「本国送金法(Homeland Investment Act)」とほぼ同じスキームだ。実現すれば、当時とは逆の円買い要因として注意する必要がある。

当時の当コーナーでも筆者は何度かレポートしているが、まずは05年に米国で実施された「本国送金法」について簡単に話を説明すると、米国企業が海外子会社で上げた利益を米国に還流させることを促進する一種の税金優遇法案のこと指す。

もう少し具体的に言えば「米国に送金する際の税率を1年に限り軽減する」時限立法を言い、それを受けて税率は従来最高の35%が実に5・25%にまで引き下げられた。
そして、この税制優遇措置を受けて、米国へ多大なリパトリが実施されている。一例を挙げると、コンピューター・サービス大手の『IBM』が海外子会社から90億ドル、清涼飲料水PEPSIで有名な『ペプシコ』が75億ドル、ほかにも『ケロッグ』や『スターバックス』など---錚々たる大手企業が「本国送金法」の恩恵を受けるべく、米国への資金還流を実施したようだ。

ちなみに、複数の外資系金融機関によると、「本国送金法」の実施で最低でも年間で800億ドル規模の資金還流が実施された模様だという。

そのすべてに為替が発生するわけではなかったものの、それでも需給的に無視出来ない要因であったことは間違いない。05年のドル/円相場が年初の102円台を年間の最安値に、年末にかけて120円台まで、ほぼ右肩上がりと言ってよい展開をたどった背景には、本国送金法」の影響が大きかった、との声が専らだ。

読売新聞の報道によると、そんな「本国送金法」の日本版の導入が検討されている模様だ。実現されれば税収の減少は必至であるため、財務省の反対も予想され、実際に導入されるかどうかは不透明な面も多い。しかしながら、続報などには是非とも注意を払いたい。(了)



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