TOP
コラムTOP
最新コラム
バックナンバー
2007年10月31日
◎欧米銀で共同基金設立、評価出来るが不十分

サブプライムローン問題をめぐり、大手米銀など民間銀行が共同基金を設立することで合意した。基金は800億ドル規模とされ、最大で1000億ドルに達する可能性もあるという。

金融危機---と呼ばれるものは過去にも何度か起こってきた。90年代後半や02〜04年には日本でも「不良債権問題」が起こり、一部の金融機関に「公的資金注入」などが実施されたことは記憶に新しい。
また、それ以前、比較的最近の事例だけを挙げても80年代末のS&L危機、98年のLTCMショックと米国においては2度の金融危機を経験している。

そうした金融危機に対する対応、救済策の発動としては様々なものがあるけれど、その多くは政府や中央銀行などが主導して実施されるものがほとんどだった。実際、前述した日本の不良債権問題のときには「公的資金」と言われることで判るように、国からの資金援助が実施されていた。これは、「護送船団方式」---などと悪く言われる日本に限ったことではなく、実は米国においても状況に大きな変化はない。

ともかく、そうした状況下、当局からの関与があったにせよ、800億ドルから1000億ドルもの巨額の資金を投じて民間銀行が基金を作ると言う意味合いには、やはり現在潜んでいるリスクの大きさを懸念してのものと言ってよいように思う。

この基金設立ということを悪く言うつもりはなく、それなりの評価もしている。しかしながら、たとえ1000億ドル(=約12兆円)もの資金が拠出されたとしても、資金的に十分であるのかという疑問も残っている。

理由は幾つかあるのだが、たとえば英住宅金融大手『ノーザン・ロック』のケースを見てみると、同行の資金を借り入れはトータルで160億ポンドにも及ぶ。これを米ドルに引き直すとおよそ320億ドル、つまり『ノーザン・ロック』一行で設立される基金の3分の1からそれ以上を食い潰す計算になる。本当に資金が足りるのだろうか?

いずれにしても、サブプライムローン問題の闇は予想以上深そうだ。かつての日本のように、米国が今後「失われた10年」---を過ごす可能性すら否定出来ないのかも知れない。(了)



Copyright (C) 2004 fx-newsletter All Rights Reserved