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2007年07月18日
◎1日にTPA失効、ブッシュ政権大打撃

「米大統領貿易一括交渉権(TPA)」---が今月1日、約5年ぶりに失効した。詳細については後述するが、TPAの失効により、ブッシュ大統領の通商政策は協定の批准などに時間を裂かれ、今後手痛いダメージを被る可能性を否定出来なくなった。

TPAとは、通常は議会で実施するはずの通商に関する事前通告や交渉内容の権限を、行政府に委譲したもので、それにより政権は交渉を迅速化できる。当時の議会で多数派を握っていたこともあり、ブッシュ政権は02年にTPA法を成立させ、また05年7月に2年延長の決定していた。しかし、そこから早くも2年が過ぎた。期限切れを前にブッシュ政権としては再延長を求めていたが、現在の議会で多数派を占める民主党が政権の更新要請に応じなかったということになる。

今回の動きで、交渉権を政権野党である民主党が取り戻したわけだが、逆に言えばただでさえイラクをはじめ中南米との関係など外交政策に大きな問題を抱えるブッシュ政権はさらに通商政策でも手枷をはめられたと言えよう。
シュワブ米通商代表部(USTR)代表は「アジア諸国が貿易関係を深める中で、米国が傍観者になってはならない」とTPAの早期復活を訴えているが、前述したように民主党が議会の多数派を握る限り、その可能性は極めて低いと言わざるを得ない。TPAの失効により、政権のボトルネック感はますます強まりそうで、米国の政策停滞が今後世界的に大きな課題となって圧し掛かる危険性を孕んでいると言えそうだ。

ではTPAの失効が、具体的にどのような影響を及ぼすのだろうか。
米議会で保護主義的な動きが高まっていることは周知のこと。その最大のターゲットとなっているのは中国であり、また我が日本も自動車業界などを中心に俎上に載せられている。

一方で言い過ぎを覚悟すれば、今回のTPA失効は「自由貿易」の否定に近いニュアンスがあるように考えている。
それからすると、米国で台頭する保護主義的な動きをいままで以上に増長させかねないような懸念を抱かせる。中国・人民元の切り上げを求める対中制裁法案の成立とともに、為替操作的なニュアンスが徐々に強まるなど日本に対しても包囲網が狭まる可能性を否定出来ない。(了)



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