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2007年06月06日
◎活発化する「外準運用論」、官房長官が前向き発言

ここのところ、財務省が保有している外貨準備高の積極運用論が声高に聞かれ始めている。実際、5月15日には塩崎官房長官から記者会見で「利回り向上を少し検証してみてはどうか」などといった発言も聞かれていた。

基本的には「大山鳴動ネズミ一匹」---。過去の経験則から考えても、話の進展する公算は低いとみるが今後の動向には一応の注意を払いたい。

外貨準備高の積極運用論について先鞭をつけたのは、筆者の知る限り4月23日付けの「英フィナンシャルタイムズ(以下、FT)」紙であったと思う。
ちなみに、FT紙では「日本政府がシンガポール政府系投資会社をモデルにした外貨準備の一部の運用を行う投資会社の設立を検討している」などと報じていた。この記事を読んだ海外勢が疑心暗鬼に駆られたのはある意味で当然だったのかも知れない。
それに対して、財務省の藤井財務次官は翌日、記者会見でわざわざ「事実ではない」と異例とも言えるようなコメントを発し、火消しに動いたことは記憶に新しい。

藤井発言もあり、FT紙報道に端を発した「外準運用」思惑は取り敢えず沈静化したが、以降再燃の兆しをうかがわせている。
その一端を担っているのが塩崎官房長官だ。5月8日に経済財政諮問会議で「外準の利回りは十分に高いのか」などと疑問を投げ掛けたことに続き、「外貨を持ったままで収益を挙げるという発想を持ってほしい」と提言した。また1週間後の15日には、前述したように会見で「利回り向上を少し検証してみてはどうか」などといった発言を行なっている。財務省に対して積極的な運用姿勢を求める姿が見て取れる。

では、塩崎官房長官が求めるような「積極運用」、あるいはFT紙による「投資会社設立」が本当にありうるのだろうか。

結論から言って可能性がゼロではないと思うが極めて小さく、限りなくゼロに近いコンマ以下の確率だろう。
ご存知のように、現在の財務省は外貨準備として保有する通貨のポートフォリオを動かすこと(米ドルの比率を下げてユーロの比率を高める---など)ですら難色を示している。それからすれば、「外準の運用」など夢のまた夢という気がする。(了)



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