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2007年05月23日
◎本邦企業は欧州シフト、為替メリット享受へ

先日財務省から発表された06年度の貿易統計でひとつ興味深い内容が示唆された。
具体的にはEU(欧州)に対する貿易黒字の大幅な拡大で、本邦輸出企業の欧州シフトがデータから強くうかがえる。具体的には、前年度に比べて実に27%増を記録している。筆者の知る限り、新聞紙上などであまり大々的に取り上げられなかったものの、欧州との貿易摩擦再燃が懸念される要因として今後の動きを注視したい。

欧州向け輸出が急増している背景には、欧州経済・消費の好調さというものも当然あろうが、やはり無視出来ないものは為替相場にあると言えよう。周知のように、昨年度はECB(欧州中央銀行)が断続的な金利の引き締めに動いたこともあり急速なユーロ高・円安が進行。ユーロ/円は期初の142円台から期末には158円近くまで1年間で15円以上、率に換算しても10%以上のユーロ高となったことは記憶に新しい。
そうした大きなユーロ高・円安メリットを享受しようと、本邦輸出企業の多くは欧州シフトを活発化していることが財務省データから確認されたことになる。

そんななか、今年2月のG7では声明にこそ盛り込まれなかったものの、欧州発の円安牽制発言がたびたび聞かれていた。その後正式には鳴りを潜めてしまったが、最近でもシュタインブリュック独財務相が 「円相場は日本経済の回復を考慮すべき」(5月8日)、ユンケル・ルクセンブルク首相からは「一段のユーロ高はユーロ圏の輸出業者に悪影響を及ぼす可能性。円は経済のファンダメンタルズを反映していない」(同9日)---との発言が一部通信社などを通してパラパラと報じられている。たとえ潜在的なものであったとしても、欧州が円安に対して強い不満を抱いていることは明らかだ。

おりしも、フランスの次期大統領にユーロ安容認論者であるサルコジ氏が就任することなどの諸環境を考えると、スグにということではないにしても欧州からの円安牽制発言は今後ジワリと強まる可能性を否定出来ないように思っている。
足元はまだストッパーが辛うじて効いている状況にある。しかし、そんな「蜜月」は長く続かないだろう。一触即発の危機を孕んでいる危うい状況にあることは間違いない。(了)



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