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2007年04月25日
◎市場で思惑広がる「英国版本国送金法」
先日、英フィナンシャル・タイムズ(FT)紙が驚くべき報道を行なった。
それは、「英財務省が英多国籍企業の本国利益送金を無税にする税制改正案を提出」---との内容だ。つまり、05年に実施された米本国送金法の英国版といったものと考えてよいだろう。
ではまず05年の米本国送金法を、いま一度簡単に振り返って見たい。
正式名称を「Homeland Investment Act」といい、米国企業が海外子会社で上げた利益を米国に還流させることを促進する一種の税金優遇法案のことだった。もう少し具体的に言えば「米国に送金する際の税率を1年に限り軽減する」時限立法で、国内での再投資など一定の適用条件をクリアすれば、税率は従来最高の35%が5・25%にまで引き下げられることになった。
そんな優遇措置を企業が見逃すはずはなく、新聞発表ベースの数字を拾っただけでもコンピューター・サービス大手の『IBM』が海外子会社から90億ドル、また清涼飲料水PEPSIで有名な『ペプシコ』も75億ドル相当の本国送金実施計画を発表している。
ちなみに、筆者の手元に残る当時の資料を見ると、外資系銀行が発表した本国送金法を受けた米国への資金還流額の推計は最小でトータル800億ドル、最大では3000億ドルとなっている。最大の3000億ドルはともかく、仮に最小の800億ドルであっても米国の貿易赤字を2ヶ月以上ほどファイナンス出来る金額であることは周知のことだと思う。
したがって、それだけの金額がマーケットに「ドル高(orドル買い)」要因として影響を与えないことはまずありえない。
実際、米本国送金法の場合にはマーケットで大きな話題を集めただけでなく、非常に強いドルの押し上げ要因として市場参加者に記憶されている。
一方で、前述したFT紙が報じた英国版本国送金法の場合には、まだ導入が決定されたわけではない。そこを間違えないでいただきたい。
とは言え、実際に導入されれば米国の例から考えても、大きなポンド買い・ポンド高の材料となることは確実だ。導入の是非を含め、続報などのニュースには注意を払って欲しい。(了)
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