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2005年11月23日
◎欧州の拡大止まらず、それがユーロの足枷に

先日まで為替市場では欧州の早期利上げ思惑、一説には「年内にも」---などといった論調が盛り上がっていたが、その後急速に覚めてきた感を否めない。

確かに、トリシェECB総裁はいま現在でも「ユーロ圏の金利は歴史的低水準」などとタカ派的な発言を続けているものの、一方でユーロ圏内の景気の脆弱さを背景とした利上げ否定派も少なくない。如何にも寄り合い所帯らしい、意見の集約が見られない状況だ。
これがすべての要因かどうかは別にして、欧州域内における意見・言動の不一致がここ最近のユーロ安の一因を担っていることだけは間違いないと思われる。

欧州がそんな寄り合い所帯の色彩を濃くしているのが、東方への拡大を示していること。実際に欧州への参加を表明している国を見ていくと、ポーランドのほかエストニア、リトアニア、スロヴェニア、キプロス、ラトヴィア、マルタ、スロヴァキア、ハンガリー、チェコ---などがある。
つまり、欧州への新規加盟国には、いわゆるバルト3国の名前も含まれているほどで、どこまで無節操に「領土」を拡大するつもりなのだろうか、と言いたくなるほどだ。

さて、そんななか先日欧州委員会から興味深い報告書が発表された。具体的には、新規加盟国によるユーロ導入について書かれたもので、「スロヴェニア、エストニア、リトアニアは、すでに導入計画を策定しているが、準備の速度を速める必要がある」「キプロス、ラトヴィア、マルタは、導入計画を策定しておらず不安材料」---などとほぼ個別と言って良いほど詳細にレポートしている。
なお、来年には今回のレポートとは別に「マーストリヒト収斂基準」に関するものが出されるようなので、個人的にはそちらにもかなりの期待を寄せている。

しかし、それにしてもいま現在の加盟国ですら意見の集約がままならず、ユーロの弱材料になっている感があるなか、これ以上の拡大が進むとなると果たして相場に与える影響はどうだろう。ましてや、その多くが国内経済状況や財政基盤などに不安を抱える国であるとすれば、なおさらのことだ。一時的な動きはともかくとして、中長期でユーロが強含む展開と言うのは、今後ますます考え難くなっていくのかも知れない。(了)



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