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2005年07月13日
◎サムライ債起債活発、為替市場の円安要因に

日本が量的緩和の解除に向けてその第一歩を踏み出した。それが正しいスタンスなのかどうかはまだ判らず今後の景気動向などを見極める必要がありそうだが、それが足元の為替市場にとって円安要因になっているとの見方がある。

弊社レターで過去に報じているように、昨年12月新たに日銀の審議委員へと就任した水野温氏(元クレディスイス・ファーストボストン証券の調査本部長)氏は、量的緩和の早期緩和を持論としていた。これは、同氏の就任記者会見で「量的緩和政策は当初の目的を達成してきている」---などと、いきなりのタカ派発言したことにも如実に示されている。

「強硬派」である水野氏が日銀審議委員に就任したから、という理由だけではもちろんないのだろうが、確かにここ最近に掛けて日銀の金融政策が目に見えて変化しつつある。これは、たとえば今年4月に日銀が公表した『経済・物価情勢の展望(展望リポート)』において、「2006年度にかけて量的緩和政策の枠組みを変更する可能性が高まっていく」との見解を表明したことなどに見て取れる。
ちなみに、上記は量的緩和解除策導入5年目で初めて公式文書で言及されたものだ。

ともかく、そうした日銀のスタンスの変化を金融市場は敏感に感じ取っている。
また、実際の行動としても日本の量的緩和解除をにらみ、海外筋などによる駆け込み的ともいえるサムライ債の起債が目に付くようになってきた。以下は筆者の知るものだけだが、6月末に掛けてだけでも韓国産業銀行が300億円、タイ王国480億円、ポーランド共和国750億円、欧州投資銀行1000億円---などが見られる。

注意を要するのは、前述したたとえば300億円や480億円といった発行額すべてが円売りに繋がるかどうかは判らないこと。発行元は円資金を調達し、そのまま円資産へと投資されることもあるからだ。とは言え、通常は高金利通貨への投資が予想される。見逃せない需給的な円安要因であることも間違いはない。今後の動静が注目されよう。

なお、日銀が考える量的緩和解除のプロセスについては、もちろん一気呵成ということではなく、段階的に順を踏んでということになるだろう。逆に言えば時間はかなり要することになりそうだ。(了)



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