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2005年06月01日
◎仏国のEU憲法批准国民投票要注意

今月29日に実施されるフランスの「EU憲法」批准国民投票がマーケットで急速にクローズアップされ始めた。これは、各種メディアで報じられる世論調査で両国とも反対派が賛成派をわずかながら上回るような状況に陥っていることによる。

「EU憲法」批准については、昨年11月のリトアニアを皮切りに、スロベニアやギリシャなどでもすでに承認がなされている。しかし、用いられた手法の大半は政府や議会によるものなどで、「国民投票」を実施する国は非常に少ない。実際、「国民投票」で承認まで至った国はスペインだけだ。
また、同じ「国民投票」であってもスペインやポルトガルの場合、いわゆる「拘束力」がないため、極論からすれば議会は投票結果を完全に黙殺することも出来る。しかし、フランスの場合には「拘束力」があるために、政府は投票結果を受け入れなくてはならないことが気掛かりだ。

では何故、フランス(国民)は「EU憲法」の批准に反対しているのだろうか。
隣国である英国在住のエコノミストによると、「一言で言い表せないほど多様な事情がある」そうだが、そのなかから敢えて幾つかを挙げてみると、「フランスから労働力の安い外国への企業移転懸念」「それを受けた国内雇用減・失業者増加懸念」「EUによる農業補助金削減の恐れ」---などがあると見られる。

どれも、「なるほど」と思わせるものばかりではあるのだが、よくよく考えてみると今回投票が予定されている「EU憲法」の内容とは直接関係していないものも少なくない。つまり、憲法に反対うんぬんというより、欧州統合のあり方そのものに対する失望感と言ってよいのかも知れない。

もちろん、日本の選挙を持ち出すまでもなく、事前に実施される世論調査というものがどの程度の確度を誇るのか疑問もある。実際のところ、フランスではかつて実施された統一通貨ユーロ導入などについて定めた「マーストリヒト条約」の批准に対しても、「反対派多数」の事前予想に反して52%と僅差ではあったが「賛成」という結論を得ることが出来た。
そのため一部には、「賛成派のあいだには妙な楽観論もある」(前述エコノミスト)とされ、それが逆に気の緩みに繋がりかねないとの声も聞かれていた。(了)



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