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2005年03月30日
◎ペイオフ完全解禁で円安は進行するか

今月15日に日銀が発表した「資金循環勘定(速報)」は興味深い内容となった。と言うのも、昨04年末の「家計(個人投資家)保有金融資産」のうち「預貯金残高」は前年比で▲0・1%となり、統計を取り始めた97年以降で初めての減少を記録したためだ。
「預貯金残高」の減少に対して、急激な伸びを示したのは家計が保有する「国債の残高」。3ヶ月ごとに2兆円程度の残高増を続けた結果、前年比は実に47・7%もの伸びを示した。さながら「一人勝ち」の様相と言ってよい。

こうした預金から国債などへ個人資金がシフトしている最大の要因は、今年4月のペイオフ全面解禁だろう。
もちろん、それに向けて金融機関サイドも預金が全額保護される「決済用預金」を先行して導入し始めるなど、個人資産の流出をストップさせようとする対応に追われているが、利息が付かないなど魅力に乏しい。結果から見ても資金流出を食い止めるまでには至っていないようだ。

いずれにしても、金融市場に携わる人間としての関心と言えばおもに2つ。ひとつは「これからも同様の資金シフトが続くかどうか」で、もうひとつは「預金から流出した資金がどこに向かうのか。外債など国外へと流出するのかどうか」---。
それに対する答えとして参考になりそうなのは、02年度のペイオフ部分解禁だろうか。当時の資料をヒモ解くと、およそ3兆円規模の資金が預金から外貨資産へと振り向けられていたことが見て取れる。とすれば、今回も同様の金額が海外へ流出する可能性を否定できないため、「ドル高」派にとっては自説を補強できる強い援軍と言えそうだ。

ただし、今回は当時と次の3つのポイントが異なることは認識しておきたい。
まずは「個人資金の流出は前述したようにすでに始まっていると見られる」こと。次いで、「当時は国内景気が低迷しており、かつ今回の個人向け国債のような魅力のある商品が国内にはなかった」こと。そして最後に、「前回のペイオフ解禁は定期預金などが対象だったが今回は普通預金など低リスク資産である」---こと。それらの理由から、当時ほど外貨預金など外物リスク資産への資金シフトは期待出来ないとみるストラテジストなども決して少なくはない。
筆者もどちらかと言えば後者論理に与するのだが、果たして結果は如何に?(了)



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