先週末に、「仕事関係の話」として、スイス中銀が行った「脅威のオペレーション」を書いた。
そのなかで、「週末以降、日経新聞や金融ビジネスなどの週刊誌でもきっと大々的に取り上げられることになるでしょう。その“負の影響”についても、ね」−−と書いたら、案の定、一般紙や週刊誌でもこの話で持ち切りだ。
そんななか、19日付の朝日新聞がチョッと気になる取り上げ方をしていた。 具体的には、「もうけが大きい分、大きい損失も伴うFXに専門家らは改めて警鐘を鳴らしている」−−との部分だ(修正なし、原文のママ)。
・・・・・・こうした論調、絶対にどこかで書かれると思ったけど、まさか朝日新聞とはねぇ。
どこが気になったのかを書く前に、「警鐘を鳴らしていた専門家」って誰のことなのだろう?朝日新聞には、是非とも教えてほしいね。
一応断っていますが、「経済評論家」や「フィナンシャルプランナー」クラスではないよね? その方たちは為替の「専門家」じゃありませんから。それから、松居一代さんみたいな「有力(?)個人投資家」や「著名ブロガー」でもないですよね?
筆者の知る限り、少なくとも筆者の周りの「専門家(現役・元職の為替ディーラー、金融機関に勤める“本物”の為替アナリストなど)」には、誰ひとり、そんな論調を言う人間がいませんので。
だって、それがもっとも問題なのだが、朝日新聞が書いた「もうけが大きい分、大きい損失も伴うFX」は完全に事実誤認ですから。
この件については、是非とも冷静に事実だけを見てほしい。「ごまかし」は一切なしです。
今回の件だって、スイスフラン/円の値動きを見ると、事件前115円だったものが、数分間で135円になっただけ。もちろん、それって業界歴20年以上の筆者も滅多にみないような考えられない値動きなのだが、冷静になって計算すると値動き的にはたった20%の変動ですよ。
逆に言えば、たった20%の変動も滅多に起こらず、起こるとオタオタするのが為替市場。少し自虐的に言うと、「それぐらい動かない」「安定している」のが為替なんです。
しかし、株価の場合、短時間で20%以上動くなんてこと、ザラにあるのでは?
極端な事例を挙げると、かつてのライブドア。あれって、最高値の株価は2000円を大きく超えていたのに、それが最後は紙くず(0円)ですよ。いったい、どれだけの暴落ですか?改めて指摘するまでもなく、先のスイスフランの変動とも比較にはなりません。違いますか??
為替の場合、どんな通貨でも「1年程度の期間で価格が2倍あるいは半額になる」ということは、まず100%ありません。それは、先のスイスフランもそうです。もちろん、断言はできないけど、1年後にスイスフランが、いまから100円も上昇し、2倍の230円になるとは到底思えませんから。
もしなったら、筆者が「切腹」してもイイぐらいの話です。これはホントですから、皆さん、是非とも覚えておいてください・・・・・・。
けれど、株式市場では価格が1年で2倍、あるいは半額になる−−なんて日常茶飯事ではありませんか?取引をやっている方はご承知だと思いますけど。
にもかかわらず、株式取引がコワイとはあまり聞いたことがなく、逆に為替ばかりが「悪者」として取り上げられる。何故??
ちなみに、当たり前ですが為替取引にもリスクがあります。 そして、今回スイスフラン取引で損失を被った人がいるのも確か。しかし、それは自分で望んで危険な取引をしていたからです。それは為替市場の責任ではありません。自分の責任です。
宝くじだって競馬だって、パチンコだって、全財産をつぎ込むようなら、「危険なギャンブル」です。それと同じこと。
ともかく、イイ加減、味噌くそ一緒にした紋切り型の論調は辞めてほしいね。 朝日新聞なんて、日本を代表する大手新聞社なのだから、キチンと「専門家」に裏取りをして、しっかりした記事を書いてください。もう、ウンザリだ。
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