先週にも一度報じた「美味しんぼ」問題がさらなる広がりを見せている。
読売新聞の報道によると、次号の週刊誌掲載分は鼻血の原因に「被ばく」を挙げるなど、さらに過激な描写が含まれているそうだ。
前回も少し書いたけれど、100%譲歩して仮に雁屋さんの意見が正しいとし、さらにキチンと取材に基づいたものだったとしても、「どうしてそういった描写を入れたのか」−−と言うことが筆者にはよくわからない。
記者が取材をした際、原稿などで使用する部分って、どんなに多くても1割ぐらい。 下手をすると、ホンの一言、二言だけってこともある。
筆者の場合には、ケチくさいので出来るだけ利用するけど、それでも多くて3割。残りの7割は泣く泣くお蔵入りせざるを得ない。
だって、考えてもらいたいけど、例えば30分話を聞いたとして、それをすべてテープに起こすとA4で50ページを超えますからね。到底すべてを使えるはずがないだろう。
だから、記者は良くも悪くも都合のいい部分、自身の関心のある部分だけをチョイスして使うことになる。これは常識。
・・・・・・そうしたなか、取材をした話題のなかかから、何故「鼻血と被ばく」の部分をあえて使ったのかわからない。 やっぱり、ある種の悪意があったとしか思えないです。
もうひとつ。
これがインタビューであれば、「○○さんが実際にそう言った」のだから、「そのまま報道」しても仕方がない。 芸能人の報道では、最後の解説などでVTRのあとに「会見で交際を否定しましたが、実際は・・・・・・」なんて言うように、自分の意見を入れたりもしますけどね。
ともかく、インタビューではなく中立的な報道であれば、ひとつのソースに固執せずに「裏取する」ことが基本になる。つまり、「○○さんがそう言った」−−という内容は真実なのかどうか、別のソースに確認する必要があるわけだ。これも記者ならば常識的な行動。
よくあるパターンは、識者と言われる方2人、それも賛成派と否定派にそれぞれ意見を聞いて両論併記で掲載する方法だろう。たとえば、「憲法改正」がテーマなら、「改正すべき」派と「すべきでない」派の意見を両方載せたりしますよね。
現物のマンガを読んでいないでいうのは何だけど、雁屋さんはキチンと裏取りをしたのだろうか? 取材はしたのかも知れないが、どうも裏取りが「甘い」気がしないでもない。一人あるいは少数派の意見(考え)を全員の総意にしていないのだろうか?
「美味しんぼ」はフィクションであるけれど、登場する人物は主人公などを除くと実在の人が多く、100%フィクションのマンガではない。そして、マンガには「表現の自由」が確かにあるけれど、それは「何をしても良い」ということとは同義ではないし、ある種の責任が付きまとうことになる。
作者もさることながら、出版社なども、裏取りだけでなく認識も甘かった気がしている。
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