今週の為替市場は、G7合意を受けた当局の対応ならびに円高阻止のスタンスをにらみつつ、円相場の動静がポイントとなりそうだ。円売り協調介入という「力技」によるものとはいえ、ドル/円の日足チャートをみるとドルの下値を積極的には売りにくい雰囲気を醸している。そうした意味では底堅い値動きをたどることも否定は出来ないが予断は許さない。先日の円高進行は第1波に過ぎず、それを乗り越えたものの今後第2波、第3波の円高到来を予想する声も少なくはない。80円レベルを再びしっかり割り込むようだと、76.30円レベルの史上再安値が視界内に捉えられるとの見方も聞かれていた。
テクニカルに見た場合、日足のチャートを見ると2円を超える長い下ヒゲに続き、先週末には実体部の非常にしっかりした陽線が記録されており、確かに目先は下値を積極的に売りにくい雰囲気も否めない。一番底という意味では、先日の76円台がある種の底値であった可能性を否定出来ない。 しかし、以前に報じたことがあるようにドル/円の底入れには幾つかの条件がある。紙幅の関係もあるため詳細は省くが、それを参考にすれば短期的な動きはともかく中期スパンで見た場合には再び先日安値の76円台近くまで、あるいは同安値を再び更新する危険性もくすぶっていると言えるかも知れない。円高再燃の動きにも一応の注意を要したい。
そうしたなか、今週は材料的に大きく2つの要因を注視している。 ひとつは、宮城県を中心とした東日本大震災に関する影響。引き続き保険金支払い増にともなうリパトリの思惑も聞かれるが、日本損保協会・鈴木会長からの「手持ち資金は潤沢」発言(17日)などもあり以前ほど声高に論じられなくなってきた。とはいえ、3月期末前という季節的な要因を加味すれば、リパトリの観測を完全に払拭することは難しそうだ。 その一方、徐々に注目度を増しているのが福島第1原発による事故の被害状況。共同通信社が本日報じたところによると、海江田経産が「原発は必ずしも安全に向かっていると言えない」などと発言したという。そうしたなか、相場と直接的な関係はないが、大使館などを含め一部の外資系は職員の国外退去や拠点を臨時で関西に移すなどの動きも観測されている。まだ目立った動きは見られないが、状況如何では外国人による「日本売り」の口実にならないとも限らないように思う。
次に注目されるものは、中東・北アフリカのほかアジアの一部でも見られる政情不安・地政学リスク。日本の大震災を受け新聞やテレビなどの報道ベースではあまり見ることもなくなったが、リビアを中心に引き続き情勢は予断を許さない。とくに本日になり、多国籍軍がリビア政府軍に攻撃を仕掛けた、との通信社報道もなされている。どうしても近視眼的、視野が狭くなりがちだがグローバルな視点も忘れずに持ち続けたい。
なお、上記以外に注目されるものを幾つかアトランダムで列挙すると、日本の政府・財務省による追加的な円売り市場介入、日本の大震災にもかかわらず早期利上げスタンスをうかがうわせるECBの次回会合に向けた動き、日銀による流動性供給の増強策、原油を主とした商品相場動向−−などとなる。(了)
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