今週の為替市場は、対円で言えば今年の6月初めから5ヵ月にわたって続いているドル安が継続するのかどうか、その見極めが重要な1週間となりそうだ。マーケットでは依然としてドル安リスクを指摘する向きが多いものの、雇用統計など先週発表された米経済指標で好数字となったものも少なくないため、風向きの変化を指摘する声も出始めていることは興味深い。下方向にバイアスをかけつつも、ドルの反発リスクにも警戒しておく必要があるのかも知れない。
テクニカルに見た場合、先週は1週間を通して80.20-81.60円といった1.5円ほどのボックス相場。また、期間をもう少し広げて過去3週間程度としても形成レンジは2円に満たない。また、視点を変えた場合に観測された「下値をジリジリと切り下げる値動き」も、年初来安値である80.23円を示現した先週月曜日で一服、その後は低位安定の値動きをたどっている。いずれにしても、ドルの下値攻めの機運が目先は和らいでいる感を否めないようだ。 問題はそうした動きが「調整・一過性」であるのか、それとも「基調転換に繋がる動き・流れ」であるのかだが、現状での見極めは極めて難しい。仮に前者であるのなら、一巡後は再びドル安進行、その過程で80円を割り込み、79.75円のヒストリカル・ローを試すような展開となりそうだ。それに対して後者であれば、現状では非常に重そうな82円をクリアに超えていく展開が見込まれよう。
そうしたなか、今週も大きく2つの要因に注目している。 ひとつは、週末に向けて実施される重要な国際会議をにらんだ政治ファクター。具体的には11-12日のG20、13-14日にはAPEC首脳会談、あるいは日米首脳会談などが控えており、一連の国際会議に向けた虚々実々の駆け引きなどに注意を払いたい。それにはもちろん、通貨の切り下げ競争や人民元問題などが中心となろうが、尖閣諸島をめぐる日中の軋轢など「金融」を抜きにした波乱要因も山積みと言えよう。とくにAPEC首脳会談について、日本は今回ホスト国。菅内閣の外交力が問われることは間違いなく、数々の難問にどう対処するのか、為替など金融市場に与える影響力も無視できない。
次いで注目されるものは、発表される米経済指標や米要人の発言について。 先週は週のはじめこそFOMCを受けた追加金融緩和からドル安が進行したが、以降はむしろ思惑が後退した感もある。背景のひとつには、前述したような雇用統計など先週発表された米経済指標で好数字となったことが挙げられるほか、もうひとつの要因としては週末のホーニグ・カンザスシティ連銀総裁が「経済の安定をさらに強めるために金利の引き上げが必要」「FOMCは金融政策について正常化への一歩を踏み出し始めるべき」と発言したように、一部の当局者からも軌道修正を示すような強気コメントが聞かれたこともある。今週以降も米政策金利をめぐっては思惑の交錯することが予想され、それに影響を与える米経済指標の発表や要人の発言には是非とも注意を要したい。
最後に、それ以外で注目されるファクターを幾つか簡単に列挙しておく。 月半ば15日前後とされる米債の大量償還観測、合計720億ドル規模となる米債の入札、先週末に掛けて再燃したアイルランドやギリシャなどの国債不安、米中間選挙での大敗を受けたオバマ政権の政策転換観測、日本の財務省による市場介入思惑−−などとなる。(了) ▲top |