今週の為替市場は、対ユーロを中心としたドル全面安の継続性を見極める展開となりそうだ。ただし、ドル/円に関しては日米首脳会談で日本の介入が実質的に黙認された感もあり、当局への介入警戒感は引き続き根強い。したがって再び84円、83円台を割り込み82.88円の年初来安値をトライするようなドルの一段安が進むかどうかは微妙な状況にある。ドルの安値圏、低位にて次の動向を探るような値動きを予想する向きも少なくない。
テクニカルに見た場合、先週末の足形はドルの基調の弱さを鮮明にしたと言えるかもしれない。何故なら、日足は1円を超える上ヒゲを記録した陰線引けで、財務省による市場介入という「力技」を受けて超えてきた移動平均の21日線をNYクローズベースで再び下回ってきたためだ。ドルの下値リスクが再燃している感もある。ちなみに、そんなドルの下値メドはフィボナッチを参考にすると年初来安値82.88円を起点とした上げ幅の61.8%押しに当たる84.05円で、割り込めば100%押しレベルが視界内へと捉えられることになるだろう。 一方、それに対するレジスタンスは現在緩やかな右肩下がりをたどっており、今週はおおむね85円台前半で推移する一目均衡表の先行帯の雲か。いずれにしても、ドルの上値が重い状況に変化は見られない。
そうしたなか、材料的に注目される要因は大きく3つある。 ひとつは、月末(中間期末・四半期末)を迎えることでの需給要因で、日本の輸出企業などが為替予約を引き下げてまでも手当てする可能性も一部で取り沙汰されている。これはもちろん円高の要因となりかねないが、それとは逆に月末週ということで今週は外貨建て投信の設定も相次ぐ。そうした外貨建て投信が為替市場に影響を与えるかどうかは売れ行き次第。とは言え、当局の介入警戒感もあり円高余地が限られるとみれば、個人投資家の資金が海外へ向かう可能性もある、などとした声も聞かれているようだ。
次いで注目されるものは、日本の市場介入について。市場では今後も継続的に実施されるのかどうかがが注視されている。 前述したように、先週実施された日米首脳会談で日本の介入が実質的に黙認された感もあるが、一方で米下院歳入委員会が対中制裁法案を承認したことを受け、「国際協調」の観点から継続的な市場介入が難しくなったとの見方も聞かれ始めた。単独介入に効果があるのかどうかという議論の前段階として、実際に今後も日本政府・財務省の介入が実施出来るのかどうか、今週はまずその点に注意をしてみたい。
最後3点目に注目されるものは、今週発表される米経済指標か。先日実施されたFOMCでは11月に掛けて追加緩和の可能性が示唆されており、実際に緩和するのかどうかはこれから発表される米経済指標に委ねられたような感もある。 なお、今週は7月のS&Pケースシラー住宅価格指数(28日)、9月消費者信頼感指数(同)、4-6月期GDP確報値(30日)、9月ISM製造業指数(1日)−−の発表などが予定されており、それら指標の内容如何では波乱も否定できないだろう。
また、それらの要因以外で注目されるモノはランダムに、日銀短観や外国為替平衡操作実施状況といた日本や中国の経済指標、人民元切り上げ観測や尖閣諸島に端を発した問題など各種の中国ファクター、あるいは足もとは無視されている感のある欧州諸国の金融不安、一本調子の上昇続く金相場−−などとなる。(了)
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