為替市場は、今週もクロスを含めた円全面高の継続性を見極める展開となりそうだ。ポジションの偏りなどを含めてやや行き過ぎている感は否めないものの、トレンドの反転は難しいとの見方もある。実際、相場の終焉にはヤラレ筋による阿鼻叫喚や断末魔が往々にして聞かれるものだが、今回はまだそうした悲鳴があまり聞かれていないことも反転を懐疑的にさせている面もある。行きつくところに行くまでは終わらないとするならば、円高方向へのリスクが高いという状況はまだ当面続く公算が大きい。
テクニカルに見た場合、年初来安値の86.27円と直近安値86.34円でドルはダブルボトムを達成した可能性が高いと思われていたが、先週末にドルはそれら安値を更新し85円台へと一時達している。リスクは間違いなくドル安方向で、さらなるドルの続落には注意を要したい。そんなドルの明確な下値メドは昨年安値の84.80円レベルであり、ここからさらに1円以上のドル安進行も否定は出来ない。 なお、経験則の観点からすると、「8月のドル/円相場」は1998年から2005年までの8年連続を含め、直近12年では実に10回がドル安・円高へと振れている。8月相場は「圧倒的な円高有利」という状況も円高派にとっては心強い支援要因と言えそうだ。
そうしたなか、材料的には注目される要因として今週も3つ挙げておきたい。 まずは、日本を主とした政治的な要因で、関連する事象でいえば衆参両院で実施される予算委員会における要人の発言などにも要注意。本日も早朝に野田財務相から「為替相場の行き過ぎた動きは望ましくない」との口先介入が聞かれているように、政府・日銀のあいだではジワリと円高への警戒感が強まりつつある。どこまで踏み込んだもの、あるいは具体的な政策が打ち出せるのかは未知数ながら、円高の進行度合いによっては予断を許さないかも知れない。
次に注目される材料は、バーナンキFRB議長が先日の議会証言で景気に対して「異例なほどの不透明さ」と述べたことに端を発した米国のファンダメンタルズ要因で、今週も発表される数々の米経済指標には要注意。そのなかでも、もっとも注視されるものはやはり週末6日発表の7月雇用統計になろう。ただし、それ以外でも7月ISM製造業景気指数(2日)、6月中古住宅販売成約指数(3日)、7月ISM非製造業景気指数(4日)などを波乱要因として注視する市場筋は少なくないようだ。 いずれもある程度の悪化は織り込まれているものの、反応するとすればドル買いよりもドル売りか。発表前後のマーケットには注意を要したい。
最後3つ目に注目される材料は、名実ともに8月入りしたこともあり、各種の需給要因となる。たとえば、7月末に掛けては個人投資家向けFX取引に対するレバレッジ規制を背景にしたポジションの解消などが円買いに寄与していたとも言われるが、8月入りにしたことでそうした特殊需給が剥げ落ちるのかどうかは注目ポイントのひとつと言えよう。 その一方、複数の輸出企業は先週までに発表した四半期決算で実勢相場と大きく乖離した社内レートを大幅に下方修正し、為替先物予約に動きやすい環境を整えつつある。下方修正したことを受けた輸出企業の為替予約がドル/円やユーロ/円の上値を強く抑制し、調整的な反発、円安進行を阻む主因として寄与する可能性もある。(了)
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