今週の為替市場で注目されるポイントは、先週末にかけて加速したクロスを含めての円全面高が継続するかどうかになりそうだ。そのキッカケともいえる米国の金融新規制案の行方についても、反対の声や慎重論などがそこここで聞かれるだけに、如何なる落とし所を迎えるのか是非とも注意を要したい。
テクニカルに見た場合、ドル/円相場は安値84.80円を起点とした上げ幅のフィボナッチ38.2%押しに当たる90.35円など、テクニカルポイントの集中した90円ちょうどから前半を割り込んできており、下値リスクを感じる足形。ポジション的にはジワリとドルショートが蓄積されつつあるものの、ドルのさらなる続落には注意を要したい。ちなみに、そんなドルの下値メドは前述安値の半値押しにあたる89.30円レベル。そのレベルをも割り込むようだと89円の大台割れが現実のものとして意識されかねない。
一方、材料的には先週からの継続案件である米国の金融新規制案の行方が注視されるほか、日銀政策金利の発表や米FOMCなどがとくに注視されている。また、週末にかけては第4四半期のGDPなど米国の重要経済指標発表が予定されているだけに、それらも数字次第ながらマーケットの波乱要因となりかねないかも知れない。
そうしたなか、ここでは前記した以外で、3つの要因を簡単に挙げておきたい。 ひとつは、日本の政治ファクター。注目要因のひとつだった小沢一郎・民主党幹事長の政治資金規正法違反事件による東京地検特捜部の参考人聴取は先週末で終了したものの、依然として日本の政局に不透明感が漂っている。世論調査における民主党支持率が低下しているとの報道も相次いでおり、それらと絡めて電撃的な小沢氏の幹事長辞任といったことも今後ないとは限らないように思う。
また、政局という意味で注視されるのは日本だけではなく、米国も同様だ。秋に実施される中間選挙に向けた選挙対策のひとつとされる、先に挙げた金融新規制案を提示したオバマ大統領もさることながら、金融政策のキーマンであるガイトナー財務長官とバーナンキFRB議長の去就も注目されている。 後者については、当初先週末にも再任が決定するとされていたが手続きが遅れ、今週にズレ込んだ。一部民主党議員が造反(?)し、承認に反対の姿勢を見せているなど予断は許さない。加えて、前者であるガイトナー財務長官も保険大手AIGへの支援を巡り週内に公聴会で証言を実施する予定とされている。米国においても不透明感の漂う政局が、やはり為替市場の波乱要因となりかねない危険性を孕んでいる気がする。
そして最後の要因は、各種の需給要因。一例を挙げると、先週末にかけて噂されたJALの破たん申請を受けた超長期為替予約の巻き戻しのほか、三井住友銀行の大台増資にともなう海外勢の円買い手当て、あるいは3月末をにらんだ日本勢のリパトリエーション−−など枚挙に暇がない。噂、思惑のなかには、どこまで現実味のあるものか判らないものも含まれているが、ともかく3月決算期末をにらんだ需給的な思惑はますます高まっても不思議はないように思う。
P.S. 日々のドル/円のストラテジーは「為替一家の華麗なるFX生活」にて。
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