今週の為替市場は、先月末に記録した84.80円がドルの当面の底であったのかどうか、足もとのドルの反発が本物であるのかどうかを見極める展開が予想されている。 若干の余談をいえば、インターバンクディーラーの間などでは良く知られていることだが、今年のドル/円相場は「米雇用統計発表前後にドル高ピークをつけて、その後反落に転じる」−−と言うケースが意外に少なくない。実際、先月も結果からするとそんな展開をたどっている。「ヒョッとすると今回も」という疑念に駆られている市場参加者もあるようだ。
チャートを見ると、ドル/円相場は11月27日の84.80円をボトムに右肩上がり。先週末には10月末高値92.32円を起点に84.80円まで下落した下げ幅の76.4%戻しである90.55円も一時突破してきた。およそ1週間で6円近いドルの急騰で、短期的にはさすがに買われ過ぎている感は否めないものの、フィボナッチの観点では100%戻しである92.32円がぼんやりながら視界内に捉えられたと言ってよい。 なお、そんなドル/円相場だが目先的には一目均衡表の雲を巡る攻防に要注意か。大雑把にいって、先行帯の雲は90円半ばから91円半ばに今週位置する。その雲をザラ場ベースだけでなくNYクローズベースでしっかり超えられるかどうかに注目したい。
一方、材料的に今週も注目される要因はいくつかあるが、個人的にもっとも注視しているものは米国金利の行方だ。 御存知のように、ここしばらくは「ドルキャリー(トレード)」という言葉も聞かれたように、低金利の米ドルを借りそれを資源国通貨やゴールドなど商品相場で運用していた向きも少なくなかった。しかし、先週末に発表された米雇用統計を受けてセンチメントが一変、先々のドル金利上昇が見込まれるようになってきた。その結果、これまで蓄積されたドルキャリートレードの巻き戻しが起こりかねない。これは為替市場におけるドル高要因となるだろう。 のみならず、日本は政府が公式な見解を示したように「デフレ」の商状であることからすると、金利の引き上げを当面予想しにくい。すると、投機筋はこれまでのドル調達から円調達へとシフトする可能性すらありそうだ。 なお、米金利に注目という意味も込め、8-10日に実施される米債の入札(トータル740億ドル分)についても十分な注意を払いたい。
それとは別に注目されるものは、日本の政府・与党による追加の危機対応管理だ。 前述したように84円台から90円台までドル/円相場は大きく反発に転じたものの、中長期のドル安の流れそのものが転換したと見ている向きは少数派。むしろ、ちょっとしたキッカケ次第で再びドル安が進みかねないと予想する向きが大勢だろう。したがって、日本政府が足もとの円安に慢心するようだと、投機筋がそうした間隙を突く格好で、再び円高に振れるリスクはくすぶっているのかも知れない。
そのほかでは、本日予定されているバーナンキFRB議長による昼食会での講演や週末11日に集中している中国の経済指標発表、来週14日の話になるがドバイ・ワールドの傘下であるナキールが保有するイスラム債の償還期限などにも注意を要したい。
P.S. 日々のドル/円のストラテジーは「為替一家の華麗なるFX生活」にて。
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