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2008年07月14日
■「イベントをこなせどこなせど先が見えない」
先週は、ECBの利上げ、米雇用統計と大きなイベントをこなしました。既にECBの利上げは織り込み済みで、その後のトリシェ総裁の会見での発言に注目が集まっていました。前週アメリカが金利据え置きを決定した中、欧州で利上げが実施され、金利差拡大となった場合の影響を過去の事例から危惧する向きは多く、またポールソン財務長官がECB前に訪欧してトリシェ総裁と会談したことから、一部にはECBも据え置くのではとの憶測も出ました。
さすがに直近のインフレ統計が示した域内物価情勢はECBとしても看過できず、予想通りの利上げに出たわけですが、では何の申し合わせも無くポールソンとの会談が終わったとは思えません。利上げ後の会見での発言、次の金利操作に関して「現段階ではどちらにもバイアスを持っていない」とのコメントにソレはあらわれていたと思っています。
利上げの言質を与えて悪戯に市場を刺激すれば、欧米間の金利差拡大が一層のドル安を誘発し、アメリカひいては世界経済にとって大きな悪影響を与えてしまう。トリシェ発言後のユーロ相場が下落した点を見ても市場は既に次の利上げへの期待と欧米金利差拡大を一部で先取りしていたことが伺えます。
ECB利上げ発表後、くしくも金曜がアメリカの休日であったことから発表された雇用統計はトリシェ発言の影響と事前予想ほどの悪さでなかったことからやや影が薄かった感じがしますが、中身は十分に深刻であったと言えます。4,5月の修正値は共に下方修正されており、6月の着地点としては予想並みの悪さであったともいえます。トリシェ発言に随分助けられたようにも思えました。
金融、自動車といったアメリカを代表する巨大企業の株価がそれを端的に示しています。月曜には大手モノラインの更なる増資の必要性を指摘するレポートが飛び出し株価はさらに沈み込み、全世界的な株式相場下落への不安は増大しています。
世界的な景気減速懸念は一方でここまで続伸の原油相場を需要低下観測から押し下げる動きを見せておりこれが数少ない株の支援材料となっているのはやや皮肉な感じがしますが、これで三竦み状態が作られるなら、一方的なドルの下落は回避となるのかもしれません。
いずれにしても先行きの見通しは霧の中という不安だけが唯一確かな状態であります。
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