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2005年06月06日
■「EU憲法批准の成否は欧州の終焉にまで及ぶのか」

28日にフランスでEU憲法批准に関する国民投票が実施されます。事前の世論調査では賛成派と反対派が拮抗しており、やや反対派が上回っているとの評からこのところのユーロ売りの一因ともされています。

この先もEU加盟各国で同様の国民投票が予定されており、マーストリヒト条約を否決した経歴を持つデンマーク、ニース条約を否決したアイルランドとフランスが批准された後もまだまだ予断を許さない状況は続きそうです。

憲法という名前を冠しているだけにこれが否決されるような事態はプロディ前欧州委員会委員長の言ではないが「欧州の終焉」を想起させる点は否めない。実際に否決の報が走ればやはり一時的にせよユーロ売りの動きが出ることは間違いないでしょう。

ところが、このEU憲法の中身を見てみると、どうも「欧州の終焉」というのは大袈裟なようです。
マーストリヒト条約やニース条約といったこれまでEUが拠り所としてきた主要条約を一本化し、EUの権限、EU大統領というポストを新設することを付け加えたものがEU憲法となっているのだそうです。つまりは現状の追認という色彩のほうが強いようです。

もしEU憲法が否決されたとしてもこれまでの条約は効力を失わない為、EUもユーロも存続を脅かされるような事態には至らないのです。ユーロが統一通貨である以上、加盟各国が一枚岩であるか無いかは、ユーロのセンチメントに少なからず影響を与えはしますが、この批准問題だけをとって中長期的なユーロ暴落のシナリオを描くことは無理がありそうです。

確かにユーロの相場は弱含みで推移していますが、他の通貨とのクロス相場を見ると必ずしもユーロ全面安には至っていないようです。対スイスフラン、オーストラリアドル、ニュージーランドドル等ではむしろ上昇しています。ユーロ単体がここに来て下げ渋っている状況に関してはロシアによるパリクラブへの返済に絡んだユーロ買いの噂などもありますがこうしたクロス通貨での動きもその要因でしょう。

してみると、米系ファンド筋のレパトリの影響から欧州系ファンドでも同様のレパトリが出始めていることも想起されるのではないでしょうか。

話がちょっと逸れました。いずれにしてもEU憲法の批准問題は報道されているよりもやや割り引いて眺めてみたほうが良いかもしれません。



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